このままでは潰れる! 小規模ホテルが挑む「シェルター事業」とは逆境の最中、斬新な試み(1/5 ページ)

» 2020年05月29日 08時30分 公開
[小林香織ITmedia]

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、多くの業界が甚大なダメージを受けている。その中のひとつがホテル業界だ。緊急事態宣言が発令され、休業を余儀なくされたところも多く、解除後もすぐに宿泊客が戻るかどうか不透明な状況が続く。

 5月25日の帝国データバンクの発表によれば、新型コロナウイルスの影響で倒産した企業の数は、合計で181社にのぼり、そのうち「ホテルや旅館」がもっとも多い36社だった。旅行はおろか、日常の行動も制限されているコロナ禍において、旅行業界への打撃は余りにも深刻だ。

 そんな逆境の最中にいるホテル業界で斬新な取り組みを行っているのが、24歳の龍崎翔子氏が率いる株式会社CHILLNN(チルン)。同社が開始した、自宅にいることが安全でない人々に向けた「ホテルシェルター」や「未来に泊まれる宿泊券」について聞いた。

CHILLNNの関連会社が運営する「HOTEL SHE, KYOTO」

軽症者の受け入れはNG。それなら誰を救えるか

 ホテルシェルターは、稼働率が下がったホテルと自宅以外に安全な仮住まいが必要な人々をマッチングさせる、というプロジェクトだ。

 「Stay Home」が叫ばれ、自宅にいることが推奨されているが、必ずしも自宅が安全な場所とは限らない。そんなSNS上の声が始動の発端だった。実際、外出制限による家庭内暴力(DV)、虐待、性暴力被害の深刻化や、看護師を親に持つ子供が風評被害に遭う、といった被害実例もある。

 同プロジェクトは、医療従事者やスーパーなどで働くエッセンシャルワーカー、公共交通機関での通勤を余儀なくされているビジネスパーソン、高齢者と同居中の家族、家庭内トラブルを抱えた人など、同居者への感染の不安や家庭内のストレスで居場所をなくしている人が主な対象だ。

 ホテルシェルターはこのような人々を救済する社会貢献であり、小規模ホテルの生き残り戦略でもある。

 「当社の関連会社、株式会社L&G Global Businessが運営する『HOTEL SHE, OSAKA』及び『HOTEL SHE, KYOTO』は、客室数が100に満たない小規模のホテルです。例えば、アパホテルさんのような大規模ホテルでは、行政とタッグを組んで軽症者の受け入れを行っていますが、小規模ホテルは行政が求める条件に一致しないため、それがかないません。

 休業を余儀なくされていても、人件費や家賃は発生するため、黙っていれば倒産に追い込まれるだけ。ホテル業界全体で生き残るための新たな一手として考案したのが、ホテルシェルターでした」(CHILLNN 広報 合田澪氏、以下:合田氏)

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