「QNX CAR」上でAndroidアプリの動作が可能に、HMIはHTML5に加え「Qt」にも対応車載情報機器

QNXソフトウェアシステムズは、車載情報機器向けアプリケーションプラットフォーム「QNX CAR」の最新バージョンにおいて、Androidアプリケーションの動作が可能になったことや、「Qt」で作成したアプリケーションをHMIで利用できるようになったことを明らかにした。

» 2013年07月18日 09時00分 公開
[朴尚洙,MONOist]
QNXソフトウェアシステムズのDerek Kuhn氏

 QNXソフトウェアシステムズは、車載情報機器向けアプリケーションプラットフォーム「QNX CAR(Connected Automotive Reference)」の最新バージョンで、Android向けアプリケーションの動作が可能になったことを明らかにした。

 QNX CARは、同社のリアルタイムOS「QNX Neutrino」をベースに、車載情報機器に必要となるミドルウェアを組み合わせて提供しているリファレンスプラットフォームである。2012年11月にリリースされたバージョン2は、車載情報機器のHMI(Human Machine Interface)などにHTML5ベースのアプリケーションを利用できるようになったことを最大の特徴としていた。

QNXソフトウェアシステムズのDerek Kuhn氏 QNXソフトウェアシステムズのDerek Kuhn氏

 2013年6月に発表された最新のバージョン2.1では、新たに2つの機能が加わった。1つは、AndroidのアプリケーションがQNX CARで利用できるようになったことだ。これは、QNX CARのベースOSであるQNX Neutrinoはそのままに、Androidのアプリケーションフレームワークや標準ライブラリ、ランタイムなどを組み合わせることで実現した。QNXソフトウェアシステムズのセールス&マーケティング担当のバイスプレジデントを務めるDerek Kuhn氏は、「AndroidプラットフォームのLinuxカーネルをQNX Neutrinoに置き換えて動作させていると考えてもらっていい。現在は、Androidのバージョン4.0(Gingerbread)までしか対応していないが、バージョン4.2(Jelly Bean)もカバーする予定だ」と説明する。

 もう1つは、オープンソースのHMI開発ツールである「Qt」で作成したアプリケーションをHMIとして利用できる機能である。QNX CARのバージョン2は、高機能のHMIをHTML5ベースのアプリケーションで実現できることを特徴としていた。しかし、HTML5ベースのアプリケーションは、ARMのアプリケーションプロセッサコア「Cortex-A9」をデュアルコアやクアッドコアで搭載するようなプロセッサ製品であれば余裕を持って処理できるが、普及価格帯の車載情報機器向けプロセッサ製品の場合、処理性能があまり高くないために動作がもたついてしまう。

 一方、Qtで作成したアプリケーションは、動作が軽快なことを特徴としている。処理性能があまり高くないプロセッサ製品であっても問題なく動作する。「ユーザーからの要望が非常に多かったこともあって、Qtへの対応を決めた」(Kuhn氏)という。

 なお、QNX CARのバージョン2.1は、2013年7月から一部顧客への提供が始まる予定である。2013年10〜12月期には正式リリースされる見込みだ。

ISO 26262に準拠可能なプログラムも提供

 QNXソフトウェアシステムズは、車載情報機器だけでなく、ディスプレイメーター(デジタルクラスタとも)や運転支援システムなどにもQNX Neutrinoの適用を拡大させていく方針である。中でも、乗員や歩行者の人命を左右する運転支援システムに適用するには、自動車向け機能安全規格であるISO 26262に準拠可能であることを示す必要がある。

 実は、QNX NeutrinoはISO 26262のベースになった一般産業機器向け機能安全規格であるIEC 61508の認証を取得しており、医療機器や軍事機器など高い安全性を求められる機器への採用実績も多い。そこで、これらの実績を基に、ISO 26262に準拠した車載システムを開発するためのプログラム「QNX Automotive Safety Program for ISO 26262」を2013年6月に発表した。

 同プログラムは、QNX Neutrinoを用いて運転支援システムやディスプレイメーター、ヘッドアップディスプレイ(HUD)を開発する際に、ISO 26262に準拠するのに必要なセーフティケースやガイドラインなどを提供する。加えて、QNXソフトウェアシステムズの機能安全対応スタッフによるサポートも得られる。Kuhn氏は、「2013年末までに、ISO 26262への準拠を容易に行えるソフトウェアやドキュメントなどのパッケージを提供する準備を進めている」と述べている。

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