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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

データセンター立地に関する各国の支援状況と日本の状況について

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経済産業省は、8月16日、「クラウドコンピューティングと日本の競争力に関する研究会」報告書を公表しました。経済産業省におけるクラウド政策全体が網羅されている施策となります。

総務省では、5月17日に公表した「スマート・クラウド研究会報告書」が、総務省全体のクラウド政策となっています。両報告書を見てみると、いくつかの連携施策も見られます。

本報告書では、クラウドコンピューティングの普及・促進を図るため、

  1. 市場の健全な発展を通じたクラウド基盤の整備・充実
  2. データの外部保存・利活用を促す制度整備と社会的コンセンサス形成、
  3. クラウドを活用したビジネスの国際展開に繋がるイノベーション創出の後押し

三位一体の政策の必要性を提言しています。

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【基盤整備】クラウド基盤の整備・充実 では、データセンタの国内立地を促進するため、地元自治体、電力会社、データセンタ事業者、IT企業などのアライアンスを複数地域で構築し、市場においてクラウドサービスの多様な選択肢が充実するよう支援し、 データセンタの環境性能を正確に測る省エネ指標(DPPE:Datacenter performance Per Energy)や、信頼性を高めるクラウド間連携のための手続きや信頼性指標について、世界に先駆けて標準化を目指すとしています。

【制度整備】データの外部保存・利活用を促す制度整備では、データの外部保存やサービスの外部委託の障害となる諸規制の緩和、匿名化を中心としたプライバシーに配慮したデータ利活用・流通のルール整備、デジタル教科書など著作物の二次利用を可能とする制度整備などを推進するとしています。

【イノベーション創出】イノベーション創出の後押しでは、大量の情報をリアルタイムに処理することで新たなサービスが喚起されるような分野について、世界を先導するビジネスプラットフォームの構築・実証事業を推進することで、クラウドサービスを通じた国際展開を図っていくとしています。

中でも重要となっているのは、データセンターの国内立環境整備で、以下のような施策(概要)が検討されています。政府全体で進めているデータセンター(クラウド)特区もこの流れになるでしょう。

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本報告書では、データセンター立地に関して、各国の支援状況も紹介されていますので、米国、EU、アジア、日本における支援制度について、少しまとめてみたいと思います。

米国の支援状況

2008年、アイオア州はMicrosoftのデータセンタを誘致することを目的とし、同社に対する優遇策(incentive package)の法案を議会で可決しています。同州に2億ドル以上投資したウェブポータル企業に対して、コンピュータ、周辺装置・機器、電力の購入についての州の売上税と使用税を6年間にわたり免税するという内容です。この内容受けてMicrosoftはデータセンタの建設を発表しています。また、再生可能エネルギーでは、風力発電で8%をまかなっており、電気代も安く抑えているようです。

米国では、州別に支援策が異なっており、一覧にしたのが以下のとおりです。

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アジアの状況

アジアの支援状況については、シンガポールにおいて、特に注目すべき点は、約4割のIT資源を政府・公共機関がアウトソーシングで利用することで、事業を育成するところです。

また、中国では、中国本土小会社のデータセンターを香港に設置可能という点があげられています。シンガポールに続き、香港でも多くのデータセンターの誘致に成功しています。

そして、韓国では、データセンター事業者に対して、事業者向けの電気代が適用されています。データセターの運営費用は電気代が多くを占めるため、電気代を削減する施策は重要となります。

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日本の状況

日本では、仙台市と石狩市の取り組みが紹介されています。

仙台市は、投下固定資産相当額3千万円以上(市内中小企業者の場合は1千万円以上)となるデータセンタを設置した場合に、新規投資に係る固定資産税等相当額の100%を3年間交付する支援制度を発表しています。

また、石狩市は、「石狩市グリーンエナジーデータセンタ立地促進条例」を制定し、土地ヷ建物の合計取得金額が2億円超で、かつ雇用5人以上のデータセンタを設置した事業者に対して、事業所等の新設に係る固定資産税・都市計画税(土地を含む。)の5年間課税免除や、再生可能エネルギー利用設備・機器への助成(限度額5,000万円)を実施しています。

石狩開発のホームページには、データセンターの優遇制度がまとめられています。

●固定資産税および都市計画税を最大5年間免除(石狩市)
データセンター事業では、5年間免除(土地を含む)かつ最大5,000万円助成。
また、物流や機械金属等の業種では最大3年間(土地を含む)免除。
●固定資産税および都市計画税を2年間免除(小樽市)
すべての対象施設が土地についても2年間免除。
●投資額の8~10%を補助!(北海道)
工場等を新設した場合、投資額の8~10%が補助。(最大35億円)
   石狩市または小樽市の補助と併せて受けることが可能。

2010年優遇制度

構造改革特別特区にコンテナ型データセンターを提案する自治体一覧」のブログの中では、石狩市や宮城県だけでなく、岩見沢市や青森県や茨城県などが、データセンター誘致に向けたコンテナ型データセンターの誘致などの提案をしています。

ただ、日本の各自治体のデータセンター誘致に向けた取り組みは、自治体個別バラバラでなかなか支援状況を把握することが難しい状況となっています。データセンターの立地の検討している事業者にとっては、非常に比較しにくい状況となっており、これらを支援する取り組みも重要となってくるのかもしれません。

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