iPhone好調は「追い風」――マイクロソフト 越川氏に聞く「Windows phoneの勝算」神尾寿のMobile+Views(1/2 ページ)

» 2009年11月18日 09時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 国内スマートフォン市場の草分けであり、立役者でもあるWindows Mobile。そのバージョンが6.5に上がるとともに、「Windows phone」という新たな名前で生まれ変わった。

 10月12日、マイクロソフトはWindows phoneの発表会を行い、新OS搭載のニューモデルやアプリ販売サイト「Windows Marketplace for mobile」の取り組みを披露。急伸するiPhoneとAndroid陣営に対して、これまでのビジネス重視からコンシューマー重視の姿勢に切り替えて、Windows phoneの勢力拡大を図ると意気込みを見せた。次世代スマートフォン市場は、3陣営が覇権を争う戦国時代に入ろうとしている。

 国内PC市場ではWindows 7人気が沸騰中であるが、“もうひとつのWindows”であるWindows phoneはどれだけ進化したのか。マイクロソフト モバイルコミュニケーション本部長の越川慎司氏に話を聞いた。

Photo マイクロソフト モバイルコミュニケーション本部長の越川慎司氏

Windows phoneで選択肢を増やしたい

ITmedia(聞き手:神尾寿) Apple、そしてGoogleが本格参入したことで、ICT業界全体が「モバイル」を注視し、そこでのビジネスを重要視しています。ライバルよりも早くモバイル市場に参入していたマイクロソフトにとっては、競争環境が厳しくなると同時に、これまでの“モバイル重視”の姿勢の正しさが実証されることにもなりました。

Photo マイクロソフトは「3スクリーン戦略」を掲げ、PCとモバイル、そして家電(テレビ)を連携させていく戦略をとる

越川慎司氏(以下、敬称略) 先日(マイクロソフトCEOの)スティーブ・バルマーも話したとおり、我々の考える3スクリーン戦略の中で、モバイルは非常に重要なセグメントになっています。これからWindows phoneというブランドで、市場拡大を積極的に行っていきます。

ITmedia 市場の拡大という点では、これまでのスマートフォンは大きな課題を抱えていました。それが“一部のマニア向け”か“法人向け”と偏った市場構成だったことです。

越川 我々も同じ認識を持っています。今までのスマートフォンは、どうしても(PCやインターネットに)詳しい知識を持った人向けというイメージが強かった。ケータイを積極的に使いこなす一般ユーザー層と、これまでのWindows Mobileの市場がうまく噛みあっていなかった面は確かにあります。

 しかし、その一方で、今の(従来型の)ケータイに目を向けますと、そちらも一般ユーザーのニーズの変化にすべて応えられているか疑問があります。これから(ドコモの905iユーザーを中心に)2年割賦支払いユーザーが買い換え期に入りますが、Windows phoneはそこで多様な形状のスマートフォンを多くのキャリアから発売し、モバイル市場全体の選択肢を増やしたい。

ITmedia スマートフォン市場の「裾野を広げる」という点では、今年はiPhoneの貢献が注目です。iPhoneが(20代・女性の)F1層をはじめとする女性に広がり始めたことで、スマートフォンのイメージがずいぶんと改善されてきました。

越川 正直に話しますと、我々はF1層を当面のターゲット層として捉えていませんでした。しかし、ここがiPhoneによって開拓されてきているのは、日本のモバイル市場にとって「いい傾向」だと考えています。やはり女性層はモバイル市場における影響力が強いですし、彼女たちが店頭(のスマートフォン売り場)に足を運んでいただけると、Windows phoneやAndroidも見ていただけますし、イメージアップになる。Appleの力でターゲット層が広がったことは大歓迎です。

ITmedia コンシューマー重視の姿勢は、昨年のインタビューで越川氏自身が語られていたものでもあります。

越川 ええ、やはり(Windows phoneとして)コンシューマー市場を求めていきたい。その観点で重要なのは、いろいろなメーカーのさまざまな機種を出さなければ、お客様の多様なニーズに応えられない、ということです。特に日本のコンシューマーユーザーは(ケータイに対して)目が肥えていますので、フルタッチパネルだけでなく、テンキータイプやQWERTYキーボード搭載機まで、デザインや形状、UIの選択肢を増やさなければなりません。

Windows phoneのブランド戦略

Photo “Windows Mobile”ではなく、“Windows phone”としてブランド認知を図る

ITmedia ここ最近のiPhoneの好調ぶりを見ていますと、ほかのスマートフォンに比べて一般ユーザー層向けのブランディングがうまくできていると感じます。

越川 そうですね。まずブランド戦略についてはiPhoneから学ぶべきところがあると考えています。我々も改善すべき点は改善していきます。

 その上でブランド戦略を考えますと、一般のお客様にとってOSのバージョンを意識される方は少ない。ですから、Windows Mobile 6.5からOSのバージョンを前面に出すのをやめて、“Windows phone”というブランドに統一します。

ITmedia なるほど。これからはOSそのものの訴求ではなく、Windows phoneで『何ができるか』『どこが新しくなったのか』をユーザー目線で伝えていくわけですね。

越川 そういったブランド訴求の点では、今年、マイクロソフトが注力しましたWindows 7にも学ぶところがあると考えています。Windows 7はブランド認知度の向上が販売にダイレクトに結びつくという、いい形でのローンチができています。Windows 7では、PCの軽快感や使いやすさ、そして(PCとWindows 7が)生活をどれだけ豊かにするかをブランドメッセージに織り込んで成功しました。これをWindows phoneにあてはめますと、“携帯電話がWindows phoneになると、どのようなメリットがあるか”を一般ユーザーの目線で訴求していく必要があります。

ITmedia 具体的には、どのようなメリットを訴求するのですか?

越川 これはマイクロソフト全体の戦略とも関係しますが、まずは『3スクリーン(PC、携帯電話、テレビ)+クラウド』のメリットを分かりやすく訴求します。そして、それを具体化するものが、アプリケーションやサービスであり、コンテンツです。

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