悪くないOracleによるSun買収e-Day

OracleによるSunの買収は悪くない。かつての盟友同士だし、意外なことに、Oracleは買収した製品や技術を上手く生かしてきたベンダーの1社なのだ。

» 2009年04月21日 02時26分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 「悪くないなあ」── 20日夜、Oracleが74億ドルでSun Microsystemsを買収したのを編集部の電話で聞かされたときの率直な感想だ。最寄駅から自宅まで歩いているときだった。

 何より、Sunのスコット・マクニーリー会長とOracleのラリー・エリソンCEOは1990年代後半、マイクロソフト帝国に対抗すべくタッグを組んだ盟友だ。データウェアハウスアプライアンスのHP Oracle Exadata Storage Serverで味をしめたのだろうか、エリソンCEOはリリース文の中で、SunのハードウェアとOracleのソフトウェアを組み合わせた、さらなるアプライアンスの投入を示唆している。

 また、IBMが交渉で引き出した70億ドルよりは若干高いものの、2008年初めのBEA Systems買収額である85億ドルを大きく下回る74億ドルでの決着だ。数字にうるさいサフラ・キャッツ社長も、「初年度から15億ドルの利益をもたらす。1株当たりの利益では、BEA、PeopleSoft、Siebelの各買収を合わせたよりも大きな貢献だ」とお得感を強調する。

 しかし、それ以上に悪くない買収となったのは、Sunだろう。Sunは、Java関連に限らず、多くの領域でさまざまなオープンソースプロジェクトを展開していることで知られている。また、主要な標準化団体においても同社の技術者たちが大きな貢献を果たしている。Oracleであれば、すべてとは言わないまでも、多くが継続されると期待していいだろう。

 マクニーリー会長がお気に入りだった「Sun Modular Datacenter」(コードネーム:Project Blackbox)も、IBMなら同種の取り組みがあり、それとは異なるものは考えられないが、Oracleならさらに推進されるに違いない。

 振り返ってみれば、Oracleは買収した製品や技術を最も上手く生かしてきたベンダーの1社ではないだろうか。1990年代前半にはディジタルイクイップメント(DEC)からRdb事業を買収し、Oracleデータベースを強化し、記憶に新しいところでも、PeopleSoft、Siebel、Hyperion、BEAなどの大きな買収がある。

 ちなみにDEC Rdb事業の買収に伴って、Oracleに移籍したチャック・ロズワット氏は現在、製品開発全般を統括する執行副社長となっている。いつのOracle OpenWorldだったろうか、エリソンCEOは、「チャックは、買収による最大の成果のひとつだ」と話したことがあるが、ジョークでも何でもない。

 Sunの革新的な研究者や技術者たちが、引き続き活躍の場を与えられることを願いたい。

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