わが社のコスト削減

生体認証が広げるコスト削減の可能性わが社のコスト削減(1/3 ページ)

銀行ATMや企業の入退室管理などのセキュリティ対策ツールとして生体(バイオメトリクス)認証の採用が増えている。高度なセキュリティの実現に加えて、コスト削減策としても注目を集めている。

» 2009年04月08日 08時45分 公開
[杉浦知子,ITmedia]

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 「なりすましを防げる」「確実な本人認証ができる」――などの理由から、銀行ATMや企業の入退室管理などのセキュリティ対策ツールとして生体(バイオメトリクス)認証の採用が増えている。ICカードやID・パスワードによる認証が抱える紛失や偽造などのリスクを回避でき、本人にしか持ち得ない指紋や手のひら静脈による認証は、高度なセキュリティを実現できると注目を集めている。この新技術には、高度なセキュリティと同時に、コスト削減を実現する可能性がある。

生体認証を出退勤管理システムで活用する

 「生体認証でコスト削減を考える場合、出退勤管理システムへの新規導入なら効果が出るのではないか」

 こう話すのは、NECでバイオメトリクス事業推進部に勤める諏訪多れい主任。2007年12月に、生体認証事業に注力すると発表したNECでは、顔認証、指紋認証を中心としたソリューションを提供している。

NEC バイオメトリクス事業推進部 諏訪多れい主任

 「生体認証に寄せられる要望は『セキュリティ対策』がほとんど」と諏訪多氏は強調する。ここ数年は、個人情報保護の観点からの引き合いが増えているという。「コスト削減の目的での導入は、ICカードと比較すると効果が見えやすい」と諏訪多氏。

 入退出管理や勤怠管理システムの新規導入の際、ICカードと生体認証の両方を比較検討している企業が多いという。ICカードによる社員証を使った入退室管理をしようとすると、ICカードには費用がかかる。例えば、印刷コストや紛失に対応するコスト、不携帯に対する仕組みを作る必要もあり、入社や異動によるカードの新規発行にもコストがかかる。「ICカードによるシステムは、システム導入に費用をかけた後もランニングコストが頻繁に発生する」と諏訪多氏。逆に生体認証システムでは、物理デバイスのコストがかからない分、コストを抑えられるというわけだ。生体認証システムでは、装置を購入した後、社員情報の登録は生体情報の登録だけで済む。社員の異動の際も、一度登録した情報を使えば良い。

 出退勤システムに生体認証を導入するメリットもある。確実な本人認証ができるとという特性によって、「なりすまし」による不正打刻が不可能になるのだ。不正打刻によって、実際に勤務をしていないにもかかわらず人件費が発生するケースがあるという、生体認証による確実な本人による打刻によって、余剰に発生していた人件費を削減できる。

 NECでは、厳密なセキュリティという観点から生体認証製品の販売を開始したが「出退勤管理での問い合わせが予想以上に多く、『なりすまし防止』用途でも利用できることに気づいた」と諏訪多氏は振り返る。実際、不正防止による人件費の削減効果は高いという。

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