まずはできることから始めようWeekly Memo

未曽有の大震災で、日本はまさに国家非常事態の状況である。自分たちに何ができるか。さらなる混乱を食い止めるためにも、まずはできることから始めたい。

» 2011年03月14日 07時42分 公開
[松岡功,ITmedia]

「東北地方太平洋沖地震」の関連記事はこちらで読めます。


東京電力が計画停電を実施

 ゴーという地響きとともにこれまで経験したことのない激しい揺れの感覚が、今も強く残っている。仕事場の書棚が倒れるのを必死で押さえたが、本や書類が一斉に飛び出し、周りにあった機材も散乱して部屋の中は動くこともままならない状態になった。東京・日本橋の一角にあるペンシルビルの4階でさえも、ビルが崩れるかも…これで終わりかも…と一瞬思った。

 恐れられていた大地震が、想定を超える規模で日本列島を襲った。3月11日午後、三陸沖を震源とする東北地方太平洋沖地震が起こり、多数の死者・行方不明者が出ている。マグニチュード9.0という規模は、地震国・日本でも観測史上最大だ。

 震源に近い宮城、岩手などで多くの建物が倒壊し、太平洋沿岸の広い範囲を津波が襲った。福島の原子力発電所では緊急事態が宣言され、首都圏でも交通がまひした。今もテレビが報じる被災地の惨状には胸が痛むばかりだ。一刻も早い被災者の救命・救援が望まれる。

 まさに国家非常事態の状況の中で、果たして自分たちに何ができるのか。さらなる混乱を食い止めるためにも、まずはできることから始めたい。

 菅直人首相が3月13日夜の記者会見で、東京電力が14日から地域ごとに順番に送電を止める「計画停電」を実施すると発表した。発電所など同社設備が大地震で大きな影響を受けていることから、企業活動が本格化する14日以降、電力の供給不足が避けられないためだ。

 菅首相に続いて会見した海江田万里経済産業相は、産業界にネオンの自粛など最大限の節電を要請するとともに、「不測の大規模停電を防ぐ必要がある」と計画停電の理解を求めた。

 計画停電とは、電力需要に対して供給能力が下回る場合に、電力会社が一定区域への供給を順番に止める措置のことである。供給能力が不足したままでは周波数が不安定になり、全域が大規模停電に陥る恐れがあるため、事前に需要を減らして電力の安定供給を優先させる。

 東電によると、14日の電力供給は13日より500万キロワット少ない3100万キロワットにとどまるという。これに対し、平日で企業活動が本格化する14日の電力需要は、休日の13日を400万キロワット上回る4100万キロワットに達すると想定されるため、1000万キロワットが不足する可能性があるとしている。

当事者意識を持って節電努力を

 計画停電は、工場、オフィス、家庭などすべての契約者が対象となる。東電では全契約者を5つの供給区域に分け、日中の3時間ずつ順番に停電する。ただ、首都機能維持を理由に、東京23区の一部(千代田区、中央区、港区)は対象から外す方針だ。

 東電によると、計画停電は3月15日以降も状況を見ながら実施し、4月末まで継続する見通しだ。計画は1週間単位で策定していくが、実施区域は前日に発表するという。

 計画停電が当該区域の企業活動をはじめ、首都圏の鉄道運行や一部の水道、信号や銀行のATMなどの社会インフラ、そして家庭での日常生活に大きな影響を与えるのは必至だ。また、こうしたすべての領域で利用されているITへの処置にも注意が必要である。企業のシステムなどは、正常な手順で停止させないと、復旧に手間取る恐れがあるからだ。

 未曽有の大震災とはいえ、こうした事態を想定した危機管理が政府および東電としてしっかりできていたのか。この点については、あらためて論議されるだろうが、まずは海江田経産相の言う通り、不測の大規模停電を防ぐためにも計画停電に協力するとともに、区域外でも可能な限り節電に努めたい。

 ちなみに13日夜の時点で、震源に近い被災地では、電気をはじめとしたライフライン復旧のめどは立っていない。避難所で待機している被災者が10万人を超えたとされる中、「とりあえず電気だけでも早く復旧してほしい」との要望が大きいという。そうした被災者の思いとともに強い当事者意識を持てば、計画停電への協力や節電に向けた努力は当たり前のことだと考える。

 菅首相は会見で、「戦後65年間で最も厳しい事態だが、日本は必ず復興すると確信している」と語った。また、地震の歴史に詳しい専門家によると、「今回の大地震は400年に一度起こるかどうかの規模」ともいう。まさに歴史に刻まれる不幸な出来事だが、下を向いている暇はない。まずは一刻も早い被災者の救命・救援を。そして私たちも強い当事者意識を持って、節電に努めたり義援金を募ったり、できることから始めよう。

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ