情報通信研究機構や国内IT各社による量子暗号ネットワークの試験運用が始まった。国家間の機密通信や社会インフラシステムの保護、民間向けサービスへの活用を目指す。
情報通信研究機構(NICT)とNTT、NEC、三菱電機は10月14日、量子暗号ネットワークの試験運用を開始すると発表した。理論上では盗聴が不可能とされる量子暗号技術の有効性を検証する。
量子暗号技術は、量子鍵配送による秘密鍵の共有とそれを用いたワンタイムパッド暗号化で構成される。量子鍵配送では、送信者が光子を変調して伝送し、受信者は届いた光子の状態を検出する。盗聴の可能性のあるビットを排除することで、送受信者間で安全な秘密鍵を共有する仕組みとなる。
米国や欧州の実験では、音声データの暗号化が限界であり、伝送距離も光ファイバの場合で数十キロメートル程度にとどまっていた。今回の実験では、NICTのテストベッドであるJGN2plusの4つの拠点に量子鍵配送装置を設置し、10〜90キロまでの複数のパターンからなる量子暗号ネットワークを構築する。盗聴攻撃の検知実験や多地点テレビ会議システムを用いた運用の実証性を調べる。
また、欧州の研究機関や東芝のシステムとも相互接続し、量子暗号ネットワークの国際標準化に向けた検証も実施する。
NICTでは試験運用を踏まえ、国家間の機密通信、社会インフラシステムや金融システムでの秘匿通信への適用を目指すという。将来的には既存の光ファイバー網を利用した安価なセキュリティサービスへの活用も視野に入れている。
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