「Microsoftのクラウド戦略は好転している」――年次アナリスト会議で強調

Microsoftのケビン・ターナーCOOは年次アナリスト会議で、クラウド戦略は好転しており、それが伝統的なソフトウェア製品にも好影響を与えると語った。

» 2010年07月30日 16時18分 公開
[Nicholas Kolakowski,eWEEK]
eWEEK

 “all in(全力を注入する)”クラウド戦略により、米Microsoftの伝統的なソフトウェア製品の売り上げも増加する――同社のケビン・ターナーCOO(最高執行責任者)は7月29日(現地時間)、アナリスト向け年次会議でこう語った。

 Microsoftは1日がかりのこのイベントを、「Windows Phone 7」「Xbox Kinect」「Office 2010」といった、リリース間近なものを含む新製品の紹介でスタートした。だが、ターナー氏は壇上に立つやいなや、クラウドへの移行とその企業顧客への影響に焦点を絞った。

 「当社顧客ベースの約35.8%は大企業、約20%は中堅・中小企業だ。今日はこの2つについて語りたい」とターナー氏は集まったアナリストらの前で述べた。同氏の講演のテキストはMicrosoftの投資家向けWebサイトに掲載されている。

 同氏は企業顧客にアピールする広範な戦略の一環として「われわれ自身を再起動、再転換、再プラットフォーム化する、つまり、クラウドに移行して顧客企業を導く」と語った。

 さらに同氏は、クラウドへの取り組みは、Microsoftの伝統的なソフトウェア製品の売り上げも増加させるだろうと主張した。

 「われわれはクラウドで先行する。これによりMicrosoftはこれまでになく多くのオンプレミス製品を販売できるポジションを獲得でき、顧客およびパートナー企業に対する非常に明確なコミットメントを示せる」(ターナー氏)

 同氏はまた、Microsoftのクラウド戦略は既に好転していると語った。

 「われわれのクラウド戦略で最も興味深い点の1つは、(第4四半期に)クラウド製品で獲得した顧客の70%がMicrosoftの新規顧客だということだ。Microsoftの顧客に、IBM Lotus Notesの顧客やNovellの電子メールの顧客が加わった。当社のクラウドは企業の生産性を爆発的に向上させることができるため、2011年度にはクラウドの顧客を劇的に増やせるだろう」とターナー氏は述べた。

 Microsoftは積極的にクラウドを推進しており、直近では7月にワシントンD.C.で開催した「Worldwide Partner Conference(WPC)」でもフォーカスした。

 Microsoftのスティーブ・バルマーCEOは7月12日に行った基調講演で「われわれはかれこれ4年間、WPCでクラウドについて叫んできた。Microsoftが皆さんと一緒にクラウドに移行するという道を選んだのは確かだ。そして、さらにやるべきことがあるのも確かだ」と語った。

 その基調講演でバルマー氏は、Microsoftのクラウド開発プラットフォームである「Windows Azure Platform」のユーザー数が1万社に上り、同社が仮想化市場の20%を占めたと述べた。同氏は、クラウドをIT部門にとって非常に有益なもの――主に管理業務に関連するコストと複雑さを削減できるという点で――と位置付けながらも、Microsoftのクラウドサービスは同社特有の内部問題を包含していると示唆した。

 「顧客企業がわれわれのシステムにデータを置き、データと業務をわれわれに委ねるようになればなるほど、信頼性、セキュリティ、プライバシーを強化する必要が生じる」とバルマー氏。

 同氏は今回のアナリスト向けイベントにも登壇し、コンシューマー関連の戦略について説明する予定だ(訳注:バルマー氏の講演については別記事を参照)。

 Microsoftはクラウドを盛んに宣伝しているが、同社の主要な売り上げは伝統的な製品からのものだ。7月22日の第4四半期収支報告で、同社は160億4000万ドルの売上高を発表した。この売上高の多くはWindows 7やOfficeなどのソフトウェアが担っている。一方、Azureはこの収益に目立った貢献はしておらず、Microsoftが企業向けクラウドの取り組みから実質的な収益を得るにはまだ時間がかかりそうだ。

 「Azureはまだ初期段階にあり、今年は収益に実質的な影響はない」と同社のピーター・クラインCFO(最高財務責任者)は収支報告の会見で語った。

変更履歴:本文中「ユーザー数が1万社に上り」とすべきところを「ユーザー数が1万人に上り」としていました。お詫びして訂正いたします。[2010/07/31 6:00]

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