Microsoft、「Windows Azure Platform Appliance」を発表「Dallas」の詳細も明らかに

ボブ・マグリア氏は同アプライアンスをCATVのセットトップボックスに例え、「見たい番組を選ぶのはユーザーだ」と語った。

» 2010年07月13日 16時25分 公開
[Nicholas Kolakowski,eWEEK]
eWEEK

 米Microsoftは7月12日午前(現地時間)、ワシントンD.C.で開催中の「Worldwide Partner Conference(WPC)」において、景気の低迷とIT市場の急激な変化という状況の中でも強大なIT企業としてのビジョンを推進する姿勢を鮮明にした。その構想の一環として同社が発表したのが「Windows Azure Platform Appliance」だ。これは、Windows Azureのクラウド開発機能を企業のデータセンターに提供するサービスだ。さらに同社は「Dallas」(コードネーム)の詳細も明らかにした。Dallasは、企業が社内のデータとクラウド上のデータを結び付けることにより、正確な情報に基づき判断できるようにするという。

 1週間近くにわたるWPCの期間中、Microsoftは自社のパートナーネットワークがもたらす恩恵を宣伝するとともに、9500社のパートナーに実地ラボを含む多彩なイベントを用意する。同市内のベライゾンセンターでは、毎朝、同社幹部のキーノートスピーチが行われる。

 Microsoftのサーバ&ツール部門のボブ・マグリア社長は、クラウド市場への進出を狙った同社の包括的な戦略の一環となる構想としてWindows Azure Platform Applianceを発表した。同アプライアンスはWindows Azureの派生製品だ。「広範な機能を搭載した“汎用的なクラウドプラットフォーム”であり、開発者はこのプラットフォーム上でアプリケーションを開発できる」とマグリア氏は説明する。

 「当社のパートナーは、自社のデータセンター内にパブリッククラウドとプライベートクラウドを構築することが重要だ」とマグリア氏は聴衆に語った。「本日、Windows Azure Platform Applianceを発表できたのを光栄に思う。これは基本的にWindows Azureを拡張した製品であり、そのすべての機能を企業のデータセンター内で実行できるようにする」

 さらに同氏は、同製品のサービス面を強調した。「これはMicrosoftから提供されるサービスを、企業のデータセンター内で運用できるようにする製品だ。企業は自社のハードウェア上、あるいは当社のデータセンターからレンタルしたハードウェア上でこのサービスを利用できる」と語った。「Azureの全機能をこのアプライアンス内で実行できるようにするのが当社の計画だ」

 同氏は、分かりやすい例えとして、このアプライアンスはCATVや衛星放送用のセットトップボックスのようなものだと説明した。「テレビを持っている人は、テレビ番組プロバイダーからサービスを受ける。テレビは電源を入れるだけで映る。しかし見たい番組をチャンネルで選ぶのはユーザーだ。われわれがWindows Azureクライアントでやろうとしているのも、まさにこういったことだ」と同氏。

 マグリア氏は、Windows Azure Platform Applianceは年内にリリースされる予定だと語ったが、具体的な時期は明らかにしなかった。


 さらに同氏は、Dallasというコードネームで呼ばれるもう1つのクラウドベースのアプリケーションの詳細も明らかにした。同氏は、この製品を社内データとWebデータの「情報マーケットプレイス」と表現した。同製品の一般向けリリースは、2010年10〜12月期に予定されている。

 Dallasにログインしたユーザーは、パブリックデータ(国連の人口統計データなど)あるいはプライベートデータを同システムにアップロードできる。データを掘り下げ、DataColumnメタデータなどの詳細を表示する機能も備える。

 Dallasではデータをサービスとしてプロビジョニングできるだけでなく、そのデータに分析ツールを適用することもできる。マウスを数回クリックするだけで「Powerpivot Integration」や「Tableau Integration」といったプログラムを読み込める。これらのツールを利用すれば、必要なデータポイントを操作できる。処理されたデータは、HTMLコードをブログやWebページに埋め込むことによって広く公開したり、電子メールを通じてプライベートに共有したりできる。

 Windows Azureと同様、Dallasもクラウド市場での競争力強化につながる差別化を実現しようとするMicrosoftの取り組みの1つだ。クラウド市場のSaaS(サービスとしてのソフトウェア)分野には米Salesforce.com、そしてIaaS(サービスとしてのインフラストラクチャ)分野には米Amazon.comといった競合企業が存在する。マグリア氏が壇上で強調したように、より総合的なソリューションを企業に提供するというのがMicrosoftの主張だ。同氏はこのソリューションを“サービスとしてのIT”と呼んでいる。

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