14年ぶりの全面刷新 マーケティング基盤に進化する「資生堂ウェブサイト」(1/2 ページ)

資生堂は2009年12月にWebサイトを刷新した。これまで細かな改良を重ねてきたが、サイトの再構築を含む大幅なてこ入れは実に14年ぶりという。刷新のポイントは、情報の整理と「マーケティングプラットフォーム」への進化だ。

» 2010年04月01日 08時00分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 資生堂は2009年12月、「資生堂ウェブサイト」を14年ぶりに全面刷新した。1995年の立ち上げからリニューアルを重ねてきたが、今回を「フルモデルチェンジ」と位置付け、サイトのコンセプトや構造、コンテンツを全面的に見直した。

 サイトの改善を指揮した経営企画部 コミュニケーション企画室 参事の五十嵐一栄氏は、これまでの資生堂ウェブサイトを「経営に結び付くサイトではなかった」と振り返る。刷新のコンセプトは「(資生堂ウェブサイトを)マーケティングのプラットフォームにする」こと。資生堂の試みから、利用者のニーズと商品の売り上げ増を両立させるヒントを探る。

情報の羅列からの脱却

image 資生堂ウェブサイト 14年の歩み」では、同社のWebサイト刷新の歴史をふり返ることが可能。当時の流行に沿って、Flashやポータル機能を取り入れてきた

 資生堂がWebサイトと歩んできた年月は長い。1995年に部門横断で立ち上げた「サイバーアイランドオブシセイドー」を皮切りに、約2年に1度、Webの流行や利用者の要望を取り入れる形で刷新してきた。主な目的は、ユーザーの声を収集し、マーケティングや商品開発に役立てたり、顧客対応の窓口にすること。同時に、「マキアージュ」や「マジョリカ マジョルカ」をはじめとするブランドサイトも複数運営してきた。

 だが、これまで同社が運営してきたWebサイトはいずれも、トップページの役割が不明瞭だった。「テキストやバナーでいっぱいになり、情報を羅列するだけの掲示板になっていた」と五十嵐氏は明かす。「プロモーション戦略やCSR(企業の社会的責任)など、タイプの異なる情報が一画面上に入り乱れ、情報が整理されていなかった」こともあり、利用者に商品情報や企業ブランドを伝えきれていなかった。

 利用者が必要な情報を見つけにくいサイトの構成も問題だった。利用者の半数以上が「商品情報を探している」(五十嵐氏)が、サイトの構成やページの見せ方はブランドごとに異なっていた。「マキアージュのファンデーションの番号」や「メーキャップのための商品の使い方」など、具体的な情報が利用者に届いていなかった。

インタフェース、回遊性、情報量――Webの基本を徹底

 「経営視点を取り入れたマーケティングに直結するWebサイト」――。これが14年ぶりの刷新において、最も大切にしたコンセプトだ。商品情報や企業情報を訪問者に分かりやすく見せることで、サイト訪問者の満足度を向上させる。資生堂のWeb戦略を企画・運営する部隊が経営企画部に移ったことも、サイト刷新の追い風になったという。同社はサイト利用の満足度向上を、最終的には売り上げに結び付けたいと考えている。

 注力したのは、サイト構造の変更による情報の整備とユーザーインタフェースの強化だ。「約57%が商品を見に来る」(五十嵐氏)という訪問者の動機を考慮し、刷新したWebサイトでは「商品・美容情報」を特に強調した。株主向け情報などを知らせる「企業情報」サイトは統一のフォーマットで別に作り、トップページからワンクリックで移動できるようにした。商品と企業情報のサイトを2つに分けることで、利用者ごとに必要な情報を届けるという構成を採用した。

商品・美容情報のWebサイト(左)と企業情報のWebサイト(右)を統一フォーマットで2パターン作った。利用者ごとに必要な情報は異なるという点を勘案したという
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