「働きやすい職場にするために、できることをしたい」。こんな思いを持つ方がすぐに実践できるのが会話の工夫だ。職場を変える鍵の1つである「褒める」ことの効用を、改めて考え直してみたい。
少し考え方を変えることで、仕事を楽しく充実したものに。「ビジネスマンの不死身力」では、そのノウハウをお伝えします。
あなたの周りに、やる気がないように見える人はいないだろうか。
仕事に対する高い目標を持っていても、やる気のない人が周りにいると、仕事がうまくかみ合わなくなる。「みんな、もっとやる気を出そうよ」と言ってみても、冷たい視線を浴びるだけ。次第に自分のやる気も収縮し、働くことが嫌になってくる……。こんな経験のある方も少なくないはずだ。
楽しく仕事ができる「働きやすい職場」には、自分だけでなく仲間のやる気も大切だ。今回は「褒める」をテーマに、仲間のやる気を引き出すための考え方をお伝えしよう。
このたび、『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』という本を上梓しました。本連載「ビジネスマンの不死身力」では、本書の内容に触れながら、職場を変える「会話の工夫」をお伝えします。会話で職場を変えるための鍵は、「伝える」「褒める」「問い掛ける」「聞く」の4つです。書籍と連動した「すぐに実践できる会話の工夫」を4回にわたり掲載していきます。拙著では、わたし自身の試行錯誤の体験を基に、現場ですぐに使える内容を紹介しています。序章は出版社のWebサイトで公開しています。
やる気とは一体何だろうか?
「夢や目標があればやる気が出る。だから、大きな夢や目標を持とう」――。最近、こんな言葉をよく耳にする。だが実際は、ちょっとした目標を掲げてみても、それを達成するためのやる気はなかなか出てこないものだ。
個人的には、「目標」と「やる気」の関連性に疑問を抱いている。誤解を恐れずに言うと、わたし自身は、目標を持ったからといってやる気が出るタイプではない。
例えば、以前勤めていた企業には、目標の達成度合いを評価する「目標管理制度」があった。年度始めに「資格を取る」といった目標を決め、定期的にチェックを受ける。自分で掲げた目標であり、達成すれば評価もされるが、目標を達成しようという気持ちよりも「やらされ感」が優先し、この制度がそれほど自分のやる気と結び付かなかった。
会社以外でもそうだった。「キャリアアップに向けて資格を取ろう」と目標を立てた時のことだ。資格の勉強をしていると少しはやる気になったが、資格を取得したことに安心すると、やる気を継続させるのは難しかった。やる気を出すためには、また次の目標を探さなければならない。
こうした経験から、「目標を持てばやる気が出るとは限らない」「やる気は『出そう』と思って出るものではない」という教訓を得た。同じ経験がある方も意外と多いのではないか。
かつては典型的な「やる気のない駄目な人」だったわたしだが、今はやる気がみなぎり、明確な目標を持っている。「人そのもの」に視点を向け、「会話のチカラ」でわくわくした職場を増やすことは、実現したい夢の1つだ。
目標や夢を抱けるようになったのは、皆さまからの温かい言葉があったからだ。顧客やクライアントからいただく「うまくいきました、ありがとう」という謝辞、メールマガジンやブログの読者から寄せられる「どうすればいいのか分かった」という気付き、本連載を通じて届く「なるほどと思った」という共感――。こうした言葉がうれしく、時に励みになり、自然とやる気や目標が生まれてきた。
大切なのは、意識してやる気を出そうとしたのではなく、自分の内側からやる気が出てきたということだ。やる気や目標は、皆さまからの温かい言葉によって引き出されたのである。
「うれしければやる気になる」。やる気とは、実はとてもシンプルなものだ。
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