ソフトベンダーの新たな稼ぎ方サイボウズLiveの可能性(1/3 ページ)

サイボウズはグループウェアの機能を備えた無償のWebサービス「サイボウズLive」を2010年前半に正式提供する。従来のパッケージソフトとは異なる切り口の同サービスは、サイボウズが新たな収益源を確保できるかどうかの試金石であるのと同時に、ソフトウェアベンダーの新たなもうけ方の可能性を示すものでもある。

» 2009年12月03日 08時20分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 サイボウズは11月下旬、個人がグループウェアの機能を無料で使えるWebサービス「サイボウズLive」を発表した。社外の人や家族、知人などを含む「グループ」を作成すると、メンバー間でスケジューラーや掲示板といった基本的な機能が使えるようになる。企業外の人と情報を共有できる「セカンドグループウェア」というコンセプトが売りだ。

 同社はパッケージソフトを収益の柱としている。だがサイボウズLiveは完全なWebサービスであり、単体での収益化を目指している。IT関連のサービスを軸にした事業戦略を採るベンダーが増える中、サイボウズも同じ方向に舵を切った。その一手は誰もが使える無料のWebサービスで利用者を集め、全体の数%から利益を上げるという方法だ。単一のパッケージソフトだけを売り込むモデルからの脱皮を図った同社の取り組みからは、ソフトウェアベンダーの新たな稼ぎ方の一端が見えてくる。

Webサービスを収益化する方法

サイボウズLiveβ版の画面 サイボウズLiveβ版の画面(出典:サイボウズ)

 サイボウズLiveは、スケジューラーや掲示板、文書共有といったグループウェアの機能をWebサービスとして提供するものだ。登録をした利用者はスケジュールなどを共有するグループを作り、利用者を招待する。グループはイントラネットの壁を越えた情報共有ができる場だ。複数企業が集うプロジェクトのメンバーが進ちょくを共有したり、家族や知人とプライベートなスケジュールを確認したりするといった用途を想定している。

 現在は一部にβ版としてサービスを公開しており、約1700人(12月1日現在)の利用者を集めている。2010年前半に提供を予定している正式版では、利用者が名前やメールアドレスなどの基本情報を登録すると、サービスを自由に使えるようになる。

 収益化に当たり優先するのは、利用者数の増加だ。サイボウズLiveは無料で使えるが、21人以上のグループを作成したり、あらかじめグループで使える200Mバイトのデータの添付容量を増やしたりする場合は、グループの作成者に月額数百円程度の課金をする。収益を担う部分がここであり、同社がこれまで提供してきたパッケージソフトによる稼ぎ方とは一線を画す手法だ。

 「全利用者の10%が有償のサービスを活用すると見込んでいる」。サイボウズLiveの製品企画や開発に携わったネットサービス事業本部 事業企画部長 サイボウズLive プロダクトマネジャーの丹野瑞紀氏は収益化のストーリーをこう描く。同氏は「8000万人のインターネット利用者のうち、仲間内のコミュニティーや企業外を含めたプロジェクトなどで形成されるグループは3500万に上る」とみる。このグループは依然として電子メールで情報や暗号化したファイルをやり取りしている。このギャップをグループウェアを主体としたWebサービスで埋めることが、新たなビジネスモデルになると考えた。

 サイボウズLiveは、従業員が数人程度の企業や個人事業主も対象している。これらの企業は初期/運用コストや情報システム担当者の不在といった理由から、グループウェアを導入するだけの人的・資金的な余力がない。パッケージソフトのグループウェアではすくい上げられなかったユーザーにも使ってもらえるサービスを提供すれば、収益は後から付いてくる。こんな発想がサイボウズLiveの無償提供を支えている。

 課金モデルとしてはグループの代表者に課金する有償サービスを主体としているが、利用者からの要望があれば「グループメンバー全員が費用を分けて負担するといった課金モデルも検討したい」と丹野氏は話している。

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