わが社のコスト削減

日本企業のアウトソーシング成功術――アクセンチュアに聞くわが社のコスト削減(1/3 ページ)

強みを持つ分野に資源を集中するために、アウトソーシングの活用を検討する企業が増えている。日本企業がアウトソーシングを成功させるためにはどうしたらいいのか。アクセンチュアに、自社の事例なども交えて3回にわたって話してもらう。

» 2009年09月03日 08時00分 公開
[田村貴志(アクセンチュア),ITmedia]

はじめに

 近年、欧米だけでなく、日本でもBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)への関心が高まっている。特に2008年秋以降の経済情勢の悪化とタイミングを同じくして、わたしたちのクライアントからもBPOに関する問い合わせが急増している。理由としては、短期的なコスト削減の手段の1ついうだけでなく、さらに中長期的な企業構造改革の手段として、BPOを真剣に考える日本企業が増えているからだ。

 BPOは1990年代の終わりごろから欧米を中心に急速に普及してきた企業改革の手法であるが、ここに来て日本でも本格的な普及段階に入った。ここではアクセンチュアがこれまでに経験した多くのBPOに関するノウハウを踏まえて、日本企業がBPOを成功させるための考え方やポイントについて解説していきたい。

BPOとは(アウトソーシングの類型)

 アウトソーシングは大きく、ITO(ITアウトソーシング)と、BPOの2つに大別される。ITOは企業活動における情報システム部門の仕事、すなわち情報システムのアプリケーション、およびインフラの保守・運用をITサービスプロバイダーに委託することである。

 一方、BPOは情報システム部門以外のさまざまな業務の実行・運営を専門のアウトソーサーに委託することである。BPOの対象となる業務プロセスは、典型的にはバリューチェーン上のサポートプロセスに相当する経理、人事、総務といったいわゆるバックオフィス機能が対象となるケースが多い。

 だが、研究開発、調達、営業/販売、カスタマーサポートといったメインラインのプロセスについても、オペレーショナルな部分を中心としてBPOの事例は多数存在しており、企業活動の業務プロセスのうち、「ルール化可能なあらゆる業務」が対象となるといえる。

 BPO市場の定義に関する各種調査においては、特に経理(Finance & Accounting)、人事(Human Resource)、購買(Procurement)、顧客接点(Customer Contact)の4つの領域が代表的なマーケットとして挙げられている。日本においても例えば、給与計算やカスタマーサポートのためのコールセンターなどは伝統的に業務委託が進んでいる領域であり、伝統的には欧米でも同じような発展形態を取っている。

 アウトソーシングを行う理由は一般的に、自社のノンコア・プロセスをより安価に実行できる専門業者、もしくはより高い専門性を持つ専門業者に委託することで、自社の人的資源をよりコアに近い業務にシフトすることとされる。言い換えると、BPOの狙いとしては、大きく「人件費を中心としたオペレーションコストの削減」と「専門スキルを活用した付加価値の獲得」の2つがある。  

 例えば給与計算をアウトソースする場合、アウトソーサーは給与計算処理に必要なシステムや社会保険労務士を抱えており、企業はそれら専門の仕組み/スキルを自社ですべて抱えるよりも安価に済むことになる。あるいは、顧客サポート業務をコールセンター専門のアウトソーサーに委託する場合、顧客とのコミュニケーションスキルに長けたアウトソーサーは顧客満足を高め、商品への買い替えに寄与することで付加価値を提供する。

BPOのトレンド

 1990年代の終わりから欧米で普及し、現在日本でも急速に関心が高まっているBPOは、伝統的な給与計算やカスタマーサポートの枠を超えた新しい流れである。新しいBPOは以下の特徴を備えている。

  • 1. グローバルの広がりでBPOを考え、オフショアを最大限活用する
  • 2. 単純なオペレーションにとどまらず、業務プロセスの全体を請け負う
  • 3. BPOをてことして全社的な構造改革を行い、より大きな効果を生み出す

 これらの流れを加速しているのは、アクセンチュアを含めたグローバルでサービス展開するアウトソーサーであり、これらはITサービスプロバイダーや、BPO専門のプレーヤーから構成されている。われわれは今後、単純業務を現状のまま請け負うだけのアウトソーシングから、より大きな効果を狙える企業変革型のアウトソーシングの需要が増えてくると見ている。

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