大きな商談を決めるプレゼンの前、怖気づいて弱気になってしまうことありませんか。そんな時に一瞬で自分を最高の状態にできるテクニック――。それがあのイチローもやっているという「アンカリング」です。
大きな商談を決めるプレゼンテーションの前、大勢の前で講演しなければならない時、怖気づいて弱気になってしまうことありませんか。自信を失って、何もかもやる気をなくしてしまったことはありませんか。
そんな時に一瞬で自分を最高の状態にできるテクニック――。それが「アンカリング」です。
アンカリングとは、特定の体験に対して、五感を利用した感覚的な刺激を条件付けし、その体験を定着させて、いつでもたやすくそのときの精神状態を引き出せるようにするテクニックのこと。NLP(神経言語プログラミング)などでよく使われるメソッドです。
ラジオから流れてきた音楽を聴いた瞬間、昔の懐かしい記憶を思い起こして当時の情景が鮮明によみがえる経験はありませんか? あれは、無意識にアンカリングされた状態だと言えます。アンカリングのテクニックを使うことによって、いつでも意図的にある体験を思い出させ、そのときのメンタリティーを再現できるようになります。
トップアスリートたちはよくこのテクニックを使っています。イチロー選手が打席でバットを前に突き出し、左手で右腕の袖を引っ張る仕草を毎回見せますが、あれも最高のパフォーマンスを引き出すためのアンカリングと言われています。
「最高の自分に変身できるアンカリング」とは、あなたが最高のパフォーマンスを発揮したときのことを思い出し、その自信に満ちたメンタリティーでいつでも物事にのぞめるようになるためのテクニックです。やや自信を失い気味の時や、やる気が出ない時、みんなの前でプレゼンをする直前、大切な商談の前などに行うと、とても効果的です。
では「最高の自分に変身できるアンカリング」の手順を説明しましょう。
あなたが一番輝いていて、自信に満ちていた瞬間を思い出しましょう。堂々としていて、最高の結果を出せた瞬間です。
それは、必ずしも学業やスポーツ、仕事などで華々しい成果を上げたことでなくてもかまいません。あなたのプレゼンにみんなが聴き入ってくれた瞬間でもいいでしょう。お客さんにものすごく感謝された瞬間かもしれません。あるいは、難しいプロジェクトを乗り切り、充実感にみなぎっている瞬間かもしれません。一番自分が輝いていたと思えることであれば何でもかまいません。
1つそんな体験を選んだら、そのときの情景を思い出してみましょう。まわりには何が見えますか? そのときあなたはどんな表情をしていますか? 身体の動きは? 感情は? 自信に満ち、堂々として、身体にはエネルギーが満ちあふれているはずです。そのときの気分に浸ってみてください。私の場合、研修や講演を終え、参加者のみなさんの暖かい視線を浴びて、万雷の拍手をいただいている時の気分に浸るようにしています。
ただし、その体験を思い出すと、一緒に何かネガティブな体験までセットで思い出すものは避けましょう。個人的な経験で言うと、研修後のアンケートに「普通」という評価をつけた人が1人でもいると、それだけで一気にガックリ。それまでの充実感や達成感は一気に吹き飛んでしまいますので、そういう記憶が蘇るようなシーンは避けるようにしています。
とにかく、100%ポジティブな体験を選ぶようにしてください。
そのときの最高の気分を表す短いフレーズを作ります。これからその感覚を思い起こす際に毎回使うフレーズですから、シンプルで覚えやすく、あなたに力強さを与えてくれるようなフレーズにしましょう。
例えば「私はどんなことでもできる」「私には無限の能力がある」「私は天才だ」「私は超一流のエンジニアだ」といった具合です。自分にとって一番しっくりとくるフレーズにしてください。私(筆者)は「私は人の中にある最高の輝きを引き出す日本一の講師だ」というフレーズを使っています。
ここでのポイントは「自分にとって一番しっくりとくるフレーズ」というところ。あまりにも無謀な表現にしてしまうと、自分の中で「いくらなんでもそれは無理だろ!」というネガティブな意識が邪魔をしてしまいますから、これでは効果はありません。
私も最初は「私は日本一の講師だ」というフレーズを考えたこともありましたが、これだと「さすがにあらゆるジャンルの中で日本一は無理だろ」という理性がすぐに働きましたから、これではアンカリングとしては機能しないわけです。あくまでも自分で信じることができるフレーズ、つまり「自分にとってしっくりとくるフレーズ」であることが大事です。
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