IoTが交通・運輸ビジネスを一変させる理由渋滞消滅? 有料道路が増える?(1/2 ページ)

人の暮らしやビジネスを一変させる可能性を持つ「Internet of Things(モノのインターネット)」。最近は交通や運輸分野での実証実験が盛んに行われている。ITによる交通マネジメントが必要とされる背景や、IoT化が進んだ未来の交通システムについて、オラクルで輸送業界担当を担当するラルフ・メンザーノ氏に聞いた。

» 2015年04月08日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

 あらゆるモノがネットワークにつながる「IoT(Internet of Things)」。ウェアラブルデバイスや、スマートシティ、次世代FA(ファクトリーオートメーション)システムなど、人の暮らしやビジネスを一変させる可能性を持った技術革新として、多くの産業界から注目を浴びている。

 IoTが活躍するであろう分野はさまざまだが、特に最近では、交通や運輸分野で盛んに実証実験やサービス開発が行われている。ITベンダー大手のオラクルも、次世代交通システムの研究に注力している一社だ。同社は2010年からサンフランシスコ市営交通局と協力し、大規模な実証実験「SFpark」を運営している。サンフランシスコの路上に設置されている、メーター式駐車スペースの状況データを収集して、約2万1000カ所の空き状況を可視化。Webサイトやアプリで提供するというものだ。

photo 米オラクルがサンフランシスコで展開している実証実験「SFpark」。メーター式駐車スペースや駐車場の空き状況をオープンデータとして公開している

 空き状況をオープンデータとして提供することで、駐車場探しの車で発生する渋滞や違法駐車を減らす狙いがあったほか、全体の稼働率を平準化して(無駄な空きスペースを減らし)収益を上げるという目的もあった。そこで過去のデータから各スペースの稼働率を算出し、あまり使われていない場所の価格は低く、稼働率が場所は高くするよう価格を設定したという。

 その結果、駐車スペースの稼働率は平準化され、駐車スペースを見つけるまでの時間も約11分半から約6分半に減り、駐車違反切符の発行枚数も14%減少したという。駐車料金に関する収益に関しては27%増加したそうだ。

photo SFParkのシステム

ITによる「交通マネジメント」が求められるワケ

 「自動車に搭載されたセンサーのデータや、位置情報をやり取りする通信速度が増し、ドライバーへの情報提供がリアルタイムになることでサービスの可能性が大きく広がっています」と話すのは、オラクルで輸送業界を担当するラルフ・メンザーノ氏だ。

 先ほど挙げた実証実験「SFpark」のように、人と交通機関で情報をやり取りし、交通機関が抱える事故や渋滞、環境対策といった課題を解決するためのシステムは「Intelligent Transport Systems(ITS、高度道路交通システム)」と呼ばれており、オラクルはシステム基盤やソリューションを提供する形でこのITSを支援している。

 「ITS」という用語は日本の研究者が提唱したもので、現在では世界共通の用語として定着している。日本にも「ITS Japan」というNPO法人が各省庁と連携して実用化促進を進めている。ITSがカバーする領域は広く「SFparkのような道路行政に関わるもの以外にも、空港や港湾、鉄道といったジャンルも含まれます」(メンザーノ氏)という。

 このように、ITによる交通マネジメントが求められる背景には、世界的な道路混雑/渋滞の問題がある。渋滞による時間的、経済的な損失は凄まじく、1人あたりの時間損失は30時間以上、経済損失は1000ドル弱にもなると言われている。世界では高速道路を無料とする国も多いが、混雑改善や財源確保のため、特定エリア内に走行する車両に課金するなど、道路通行に対する課金が一般化しつつある。

 特に欧米では、HOT(複数乗車割引)レーンやHOV(複数乗車専用)レーンを採用する道路もあるが、デジタルカメラで撮影した画像を使い、1人乗りと2人乗りを自動で解析して料金を変えるといったことも、オラクルの製品で実現できるという。「画像を含む車両の情報や決済システムなど、さまざまなデータやシステムを管理、連携させるのが重要です」(メンザーノ氏)

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