新卒の採用開始が12月になった理由と各々の思惑(1/2 ページ)

» 2011年06月24日 08時00分 公開
[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 リクナビ、マイナビなどの新卒採用サイトが、オープンを例年の10月から12月に遅らせるようです(日本就職情報出版懇話会ではいったん11月としましたが、さらにそれを1カ月遅らせるようです)。日本経団連と大学側が話し合い、採用選考に関する広報活動の開始を12月にしようという動きを受けての対応ですが、ここまでのそれぞれの中途半端な対応は実に面白いと感じます。

 今回、一石を投じたのは日本貿易会で「卒業年の夏以降に短期集中で選考をすればよいのではないか」と提言しました。大学は「就職活動が原因で授業に支障をきたしており、学生の本分は勉学であるので採用の時期を見直してほしい」という昔からの主張を続けており、「これを産業界として受け入れればいいのではないか」という姿勢を明確にしたわけです。

 何となく格好いい感じがしますが、日本貿易会は大手商社など学生に人気の会社で構成された団体なので、そんなに採用に苦労していないから言えること。かえって、一斉に短期間で採用活動を行うことで他業界に勝ちやすくなるという計算も透けて見えます。

 この提言の大胆さに対して、日本経団連も無視するわけにはいかず、独自の方針を打ち出さざるを得なかったわけですが、それが12月から採用広報を開始するという内容です。2カ月だけ遅らせようということで、学生には不人気・知名度の低い業界・企業からの早く開始したいという声、大学側からの「3年次の試験が終わる3月からにしてほしい」という声などに配慮し、間をとったような根拠のない設定です。

 日本経団連会長が首相が退陣時期を明確にしないことを「言ったことをきちんと実行しないと、若い人たちの教育上も具合が悪い」などと批判していますが、目配りの上で足して2で割るような結論の出し方が若い人たちの見本になるとは思えません。

 そして、これを受けて2010年秋に採用サイトの運営会社団体(日本就職情報出版懇話会)が出した結論が11月開始。日本経団連の方針通りに2カ月も掲載期間を短縮してしまうと、「掲載料を下げるのが当然」といった雰囲気になるのを恐れたのでしょう。「掲載期間が1カ月短くなるだけなら、掲載料は今のままで営業できるのではないか」という思惑です(結局、「掲載料を下げろと言う会社は少ないだろう」と考えたのか、12月オープンに揃えることになりました)。

 これに対して、国立大学協会など大学側も「残念だが一定の評価はする」などと言っているので、これまでの主張は本気だったのかと考えてしまいます。

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