“朝専用”で缶コーヒー戦争に革命――アサヒ飲料「WONDA モーニングショット」コンビニ、ヒット商品の理由(1/2 ページ)

» 2011年06月21日 08時00分 公開
[笠井清志,Business Media 誠]

「コンビニ、ヒット商品の理由」とは?:

限られた売り場を最大限に活用して、面積当たりの売り上げを高めているコンビニ。約100種類の新商品が毎週発売されているが、売れない商品は発売から2週間ほどで撤去されてしまう。厳しい審判をくぐり抜け、コンビニでヒットしているのはどんな商品なのか。一般には「おいしい商品」「お得な商品」「テレビCMが放映されている商品」が売れると思われがちだが、実は重要なのは「店頭展開」。このコラムでは、コンビニのヒット商品を展開方法の観点から分析していく。


 コンビニの缶コーヒー売り場といえば、多くのメーカーが相次いで新商品を投入する激戦区の1つ。「ジョージア」(日本コカ・コーラ)、「Roots」(JT)、「ファイア」(キリンビバレッジ)、「BOSS」(サントリー)、「UCC」などさまざまなブランドが日々、棚のスペースを取り合っている。競争の激化から、缶コーヒーブランドの新商品とプライベートブランド商品とのセット販売を行う事例も過去にあったほどだ。

 そんな厳しい缶コーヒー戦争が行われる中、今までの戦争のやり方をまったく変えることに成功した商品がある。アサヒ飲料の「WONDA モーニングショット」である。

WONDA モーニングショット(出典:アサヒ飲料)

“朝”“サラリーマン”に特化した商品開発

 「WONDA(ワンダ)」ブランドが立ち上がったのは、1997年のこと。当時の缶コーヒー市場はブランドによって商品が手に取られる傾向にあったのだが、アサヒ飲料の「J.O」ブランドは市場において存在感を弱めつつあった。そこで、WONDAを「新世代に向けた新世代の缶コーヒー」のブランドとして打ち出したのである。

 ブランドの認知拡大にあたっては、「新世代缶コーヒー」というコンセプトを一番体現できるキャラクターとして、当時新時代のヒーローとして登場したタイガー・ウッズをCMに起用した。その目論見通り、WONDAのイメージはある程度定着したものの、競合との一進一退の攻防の中でブランドイメージは再度薄まっていくこととなる。

 そんな危機感のもと、2002年に開発された商品が「WONDA モーニングショット」である。

 マーケティング戦略を描く際、重視されるのがマトリックス図である。それまでのコーヒー市場では、次の2軸の組み合わせのマトリックス図で主に戦略が描かれてきた。

1.「男性・女性」×「年齢高い・低い」という顧客軸マトリックス

2.「ミルク・ブラック」×「加糖・無糖」という味軸マトリックス

顧客軸マトリックス(左)、味軸マトリックス(右)

 しかし、アサヒ飲料のマーケティング担当者は、まったく新しいマトリックス図を描いてみせた。それが、「『朝・夜』×『年齢高い・低い』という飲用シーン×男性特化マトリックス」である。過去の缶コーヒーについての調査から、「朝に缶コーヒーを飲む男性が多い」という結果が出ていたので、「思い切って“朝”“サラリーマン”に特化した商品開発をしてみよう」と考えたのである。

アサヒ飲料が描いたマトリックス図

 その際に、先に述べたようにマトリックスを活用し競合商品を調べてみると、まったくの無競合状態(ブルーオーシャン)が見えてきたのである。

 そこで「朝専用」という点を大いにアピールしたマーケティング戦略を実行。所ジョージさんや仲間由紀恵さんを起用し、朝のビジネスマンをイメージさせるような広告を展開した。結果はご存じの通り、「朝=モーニングショット」というブランドイメージ定着に成功。ほかの定番商品同様に先行者メリットを最大限享受できたのである。この大ヒットを受け、ほかのカテゴリでも“朝専用”を訴求する商品が登場することとなる。

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