日本コカ・コーラにしかできないこと――ブランドの価値から“本物”の体験を創造するデジタル施策とは山口義宏が聞く「最強ブランドのデジタル戦略」(1/3 ページ)

モバイル+自販機で展開する日本コカ・コーラの新デジタル戦略について山口義宏氏が斬り込むインタビュー企画の後編。最先端の施策で同社が目指すものとは何か。

» 2016年12月23日 08時00分 公開
[志田実恵ITmedia マーケティング]

 前回「『コカ・コーラ パーク』から『Coke ON』へ、日本コカ・コーラがモバイル+自販機で打つ次の一手」では、2016年4月に始まったモバイルアプリ「Coke ON」と「スマホ自販機」を軸に展開する新たなデジタル戦略の概要と、「コカ・コーラ パーク」閉鎖のいきさつについて、日本コカ・コーラ IMC iマーケティング統括部長の豊浦洋祐氏に聞きました。インタビューとなる後編では、日本コカ・コーラが描くマーケティングゴールと、デジタルマーケターが目指すべき目的について、豊浦氏と山口氏がさらに深く語ります。


コカ・コーラのデジタルストラテジー3.0

山口 Coke ONにおける戦略決定は豊浦さんの所属するマーケティング本部 IMC(Integrated Marketing Communication)が推進してきたのでしょうか。

豊浦 多くの部署が関わる大プロジェクトなのでどこがリードしているかは一概には言えません。カード型のスタンププログラム導入と実証を経てスマホアプリを実現するところは自販機チャネルの部署が音頭を取り、Bluetoothやビーコンの実装はR&Dがリードし、自販機への取り付けをどうするかはボトラーの管轄です。

山口 まずはインフラを整えないといけないわけですね。マーケティング部門のミッションはどういうことになりますか。

豊浦 IMCはスマホアプリ設計とブランディングを担います。KPIとしてアプリのダウンロード数の増加に責任を持ちます。スマホ自販機の数をどう拡大していくかは自販機チームとボトラーが管理していますので、これまでは生活圏への浸透状況を見ながら少しずつダウンロード数を伸ばすようにしてきました。しかし、11月末にスマホ自販機が10万台を超えました。国内のコカ・コーラ自販機総数は約98万台ですから10%以上がスマホ対応になってインフラも整い始めたということです。そこで、オンラインメディアで動画広告も開始し、12月5日からはテレビCMも打っています。現時点で130万ダウンロードほどですが、12月末までに200万ダウンロードを目指します(編注:取材日時点)。

山口 実は私、昨日実際にCoke Onアプリを使おうとしたら自販機が反応せずに諦めたのですが、まだスマホ自販機ではないものに当たってしまったのですね(笑)。このようなユーザーを減らすための活動が今まさに本格化していると思うのですが、今後の展開についても教えてください。

豊浦 Coke ONは日本コカ・コーラにとって「デジタルストラテジー3.0」と位置付けています。1.0がコカ・コーラ パーク。2.0は、2012年頃から生活者のソーシャルシフトが進んでいく中でブランドのビジビリティ(可視性)をどう上げるかに注力してきました。3.0はデジタルとフィジカルを組み合わせた新しいサービス。単にコミュニケーションだけではなく、Coke ONの上で具体的にサービスを提供していきます。「買う」「飲む」「楽しむ」という3つのモーメントにユーザーの気持ちがオンになる、気持ちにスイッチが入る、そういうアプリにしたいです。

山口 3.0でフィジカルな体験提供までいくと、デジタルマーケティングのユーザー体験は一気に濃くなり、ブランドが印象にも残るし、ベネフィットも強化されますね。タグラインにも“Switch on your moment”とありますね。Coke ONというアプリ名も、そこから来ているのでしょうか。

豊浦 コカ・コーラにしかできないことを突き詰めない限りは、使われないどころかダウンロードもされません。それで「アプリと生活者の接点を持てるシーンに、コカ・コーラらしいサービスを提供して、より楽しくおトクに」というコンセプトが伝わる名前にしたいと考えました。決定までにはさまざまな候補が挙がりました。「コカ・コーラフレンズ」とか「コカ・コーラ365」とか。「Pokemon GO」以前ですが「コカ・コーラGO」というのもありましたよ(笑)。そうした中で、短さや検索のしやすさも考慮して、この名前になりました。

イメージ モバイル+自販機で新たな価値を創造する「Coke ON」
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