中堅・中小企業ならではの「データ分析のスモールスタート」中堅・中小企業のための“脱Excel”ロードマップ【第4回】

中堅・中小企業にはさまざまなリソースの制約がある一方で、小回りが利き意思決定が速いという強みもあります。この特徴を踏まえ、データ分析プロジェクトを成功させる秘策を探ります。

2017年02月27日 09時00分 公開
[村山 聡]

連載について

 「Microsoft Excel」(以下、Excel)は、ビジネスにおいてなくてはならないソフトウェアとして、あらゆるビジネスシーンで長年広く利用されています。一方で、Excelがあまりにも普及してしまった“副作用”が少なからず見られます。ビッグデータブーム以降、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールがデータ分析ツールとして再び注目を集めましたが、いざ導入しようとすると現場の反対を受け、思うように導入が進まないといった問題も見受けられるようになりました。

 「なぜ、ビジネスの現場でExcelの利用がやめられないか」――本連載では、その理由を検証し、どのようなプロセスでBIツールの導入を進めていくべきかについて解説していきます。


データ分析は何のためにするのか

 数年前からデータ分析の分野では、ビッグデータや人工知能(AI)といったキーワードに関連する記事が相次いでいます。これらの記事で紹介されるデータ分析手法は、高度な統計解析手法や膨大なデータを利用していることが多く、先進的な事例として非常に魅力的です。ただし大企業と比較してさまざまなリソースの制約がある中堅・中小企業では、このようなデータ分析の導入は難しいのではないか、と考えてしまうかもしれません。

 ですが、データ分析は、最新の手法だからいいというものでもありません。企業におけるデータ分析は、データ分析によって得られた結果を基に施策を立案し、会社の利益に結び付けられるように実践していくことで、初めて意味があるものとなるからです。

分析手法を決める要因はデータだけではない

 例えば社内にある顧客ごとの売り上げデータをデータ分析によって分類し、その分類に合った施策を立案したいというニーズがあるとします。このような場合のデータ分析手法には、「デシル分析」「RFM分析」などが考えられます。デシル分析は、累積購買金額の多い順に顧客データを10等分に分ける分析手法です。RFM分析は、R(Recency:最終購買日)、F(Frequency:購買頻度)、M(Monetary:累積購買金額)の3つの軸で分類する手法です。では、これらの手法で分析を行えばいいかというと、そう拙速には決めてはいけません。少なくとも以下のことについては確認しておく必要があります。

  1. 他に利用できるデータがあるかどうか
  2. データ量や施策の予算に対して分類数は適切かどうか
  3. 利用する側が分析結果を理解できるかどうか

 「1.他に利用できるデータがあるかどうか」を確認する理由は、データ分析手法の選択肢が広がる可能性があるからです。例えば、顧客ごとの売り上げデータがあるということであれば、年齢や性別といった顧客の属性データも存在する可能性が高いはずです。もし属性データがあれば、統計的分類手法である「クラスタリング分析」が利用できるかもしれません。また顧客ごとの売り上げデータがあるということは、顧客がどのような商品を購入したか分かる明細データもある可能性が高いでしょう。この場合、どの商品とどの商品が一緒に購買されているかを分析する「バスケット分析」が可能になります。バスケット分析をすることで、顧客データを分類した後に、その分類において、顧客がどのような商品を一緒に購買しているかを知ることができ、施策立案に役立てることができるでしょう。

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