2050年までに、AI(人工知能)にノーベル医学生理学賞を取れるような科学的発見をさせたい──。デジタルガレージなど3社が共催し、最先端のインターネット技術やビジネス動向を議論する「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2017 TOKYO」で7月26日、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)のCEOでもあり、自身が2000年に設立したシステムバイオロジー研究機構(SBI)の代表である北野宏明さんが登場。「ノーベル賞を取れるAI」の未来像と、AIが打破すべき科学の課題を語った。
「AIでノーベル賞を取る」という北野さん。「今の科学的発見は運任せ」だと指摘する。AIが本当のブレークスルーを生み出すのは「知識を生み出す道具」になった時だともいう。どういうことか。
「『2050年までにノーベル医学生理学賞を取れる発見ができるAIシステムを作る』という論文を書いたら、『ノーベル賞は人にしか与えられない』という鋭いツッコミをいただいた」という北野さん。
「だから、目標をちょっと違うものに変えた。名付けて『ノーベルチューリングチャレンジ』。ノルウェー・ノーベル委員会が、AIだと気付かずに賞をあげてしまうことを目指すことにした。言ってみれば、ノーベル委員会を相手にした“チューリングテスト”だ」
北野さんは「ビットコイン」と「ブロックチェーン」の論文を世に送り出した“サトシ・ナカモト”に言及する。
「彼のことを誰も見たことがない。1人かもしれないし、グループかもしれない。彼がAIではないと私たちが考えているのは、AIがそこまでのレベルにまだ達していないにすぎないという、それだけの理由だ」。正体不明の論文がAIによって書かれる未来もあり得ると、北野さんは説く。
ノーベルチューリングチャレンジを成功させるには、2つの要件があるという。1つはAIが非常に大きな科学的発見をすること。もう1つはAIが自律的に意思決定し、人間の研究パートナーとして違和感なくコミュニティーに入ってくるということだ。
北野さんは続けて、AIが打破すべき「科学の課題」を説明する。
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