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「Nintendo Labo」は何がスゴイのか 公式映像から考察してみた

» 2018年01月18日 11時06分 公開
[片渕陽平ITmedia]

 任天堂が4月に発売する「Nintendo Labo」は、家庭用ゲーム機「Nintendo Switch」向けの段ボール工作キットだ。段ボールからピアノ、ロボットになりきれるスーツなど、Switchのゲームと連動するコントローラー「Toy-Con」を組み立てる。同社が1月18日朝に発表すると、ネット上では「スゴイ」「感動した」「デジタルとアナログの融合だ」などの声が上がった。現時点で公開されているNintendo Laboの公式動画から「何がスゴイのか」を考察する。

photo Nintendo Laboは、Switch向けの段ボール工作キットだ

Switchの秘めていた機能をフルに引き出す?

 発売するのは、5種類の工作キットが入った「バラエティキット」(6980円、税別/以下同)と、ロボットのパーツを作れる「ロボットキット」(7980円)。公式サイトによれば「ピアノや、つりざお、バイクなどをつくって、それを『Nintendo Switch』と合体させると、演奏したり、魚をつったり、レースしたり……」できるという。

photo バラエティキットには5種類の工作キットを収録
動画が取得できませんでした

 「ピアノ」「つりざお」は分かりやすいが、筆者が注目したのは「リモコンカー」だ。足が6本付いた“昆虫のような”リモコンカー(当然、段ボール製)に、Switchのコントローラー「Joy-Con」を装着。Switch本体画面に表示されたボタンで操作するようだ。公式動画を見る限り、このリモコンカーはSwitchの「HD振動」という機能を利用していると思われる。

photo 振動を利用して動くリモコンカー(公式動画より)

 HD振動は、Joy-Conに内蔵したモーターが細かく振動。振動の違いによって、ボールが転がる感覚や、ガラスの中で氷がぶつかる感覚などを表現し、握ったJoy-Con越しにユーザーが体感できる――というものだ。ただ、HD振動は「1-2-Switch」など一部ゲームソフトでは大きく扱われているが、ネット上では「過剰な機能ではないか」「おまけの機能」という声もあった。

 リモコンカーには、そんな繊細な振動が“生きている”ようだ。リモコンカーには車輪はなく、直立した足が付いているだけ。公式動画では、まるで「トントン相撲」のように振動で動かす様子が紹介されている。

 もう一点、「おまけ機能」扱いする意見もあったSwitchの機能、「モーションIRカメラ」も、Nintendo Laboに組み込まれている。Joy-Con(右)に備えたモーションIRカメラは、目の前の物体に赤外線(IR)を照射し、反射した赤外線をカメラが捉えて映像化、Switch本体に動きの情報を送信するという機能を持つ。

 公式動画では、段ボールで組み立てたピアノにJoy-Conをセッティング。モーションIRカメラを使い、指で押した鍵盤を認識しているとみられる。

 Nintendo Laboは、Switchが秘めていた機能をフルに引き出す周辺機器になるかもしれない。

photo 段ボールで組み立てる「ピアノ」
photo
photo モーションIRカメラを活用しているようだ

「枯れた技術の水平思考」

 Switchの快進撃が止まらない。全世界での累計販売台数は、2017年12月時点で1000万台を突破。17年度(18年3月まで)の販売目標は発売当初1000万台だったが、1400万台に上方修正した。

 一方、17年3月発売以来、「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」「スプラトゥーン2」「スーパーマリオ オデッセイ」と任天堂の人気IP(知的財産)を立て続けに投入し、筆者からするとラインアップは“ひとまず落ち着いた”印象がある。そうした中、ユーザーに長くSwitchを遊んでもらうために周辺機器を発売する、という考えは容易に想像できる。

 18年現在、イメージしやすい周辺機器の1つに「プレイステーション4」(ソニー)の「PlayStation VR」がある。ヘッドマウントディスプレイを装着しVR(仮想現実)映像を楽しめるゲームは、16年、17年と「東京ゲームショウ」などを席巻。「VR元年」という言葉も記憶に新しい。

 しかし任天堂の宮本茂専務は、16年の株主総会で「VRに限らずARなど研究を続けている」「3D技術を含めて基礎技術は一通り有している」としながらも、「(米国のゲーム展示会『E3』では)VRがそれほど大きな話題になったとは感じなかった」と発言していた。

 「実際に体験できた人は高評価を与えていたとしても、周りで見ている人にはそれが理解できず、また、その体験がどのような商品として実現できるのかが分かりにくかったからではないかと推論している」(宮本氏)

 任天堂が「新しい遊び方」として提案するNintendo Laboは、段ボールという“アナログ”で勝負に出た。「ゲームボーイ」生みの親として知られる任天堂の開発者、故・横井軍平氏の「枯れた技術の水平思考」を想起させる。最新技術ではなく、広く普及しコストが安く、メリットもデメリットも判明している技術を、これまでとは違う方法で活用する――そんな哲学がNintendo Laboにも流れているように、筆者には感じられるのだ。

 親子が段ボールを組み立てる、遊んでいる本人だけでなく周囲も巻き込む。そんな映像を見て笑う、横井氏の顔が浮かぶ。

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